犬コロの犬小屋

音楽、料理など趣味を呟きます。

記憶に残ってるあの日

はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」

 

僕が今でも鮮明に覚えているあの日

大学2年の夏、とても蒸し暑い日でした

当時の僕はバイトとバンドばかりの日々を送るダメ大学生で暇な日が殆どなかった

毎日何かしらの予定があった為髪も汚く伸びっぱなしだった

流石にまずいと思い夏だし短くしてサッパリしようと時間を空けて駅前の美容院へ向かった

僕の家は駅から離れていた為原チャリに跨り少し涼しくなった夕方6時ごろに颯爽と美容院へ向かった

その日は風が心地よくバイクを乗るにはうってつけの日だった

しかし

坂道を降りカーブを曲がる瞬間突然の突風

風で服がめくれまるで船の帆のように風の抵抗をもろに受けた

目の前には電柱

急いで舵をきったが間に合わず電柱に強烈な膝蹴りをかまし

しかし大学生とは呑気である

この時の僕は

このままコケてバイクダメにしたら明日からの通学がめちゃくちゃめんどくさい!

まさかのバイクの心配である

もうちょっと自分の体を大事にしろ

すかさず僕はぶつけていない方の右足とバイクのブレーキで減速しそのまま飛んで着地した

バイクは無傷だった

車通りの少ない道路で本当によかった

着地後すぐに激痛が襲ってきた

時速何十キロで全体重を乗せてコンクリートに膝蹴りをかましたのだ

当たり前である

いってぇー!

驚くほどシンプルかつマヌケな言葉が飛び出した

緊急事態である、語彙力などない

近くを歩いていたおばさんが駆け寄ってきた

あんた大丈夫?!

すかさず僕は

大丈夫です!

と答えた

この場で言いたいのは事故などにあった際大袈裟などと思わず救急車を呼ぶべきである

大袈裟かどうかは医者が判断するのである

特にバイク事故などは本人が気づかないうちに頭を打って事故から時間差で症状も出ることがある

話がそれました

結果から言って僕は膝の皿がコナゴナ一歩手前になりました

亀裂四箇所に完全に折れてたのが一箇所

しかし僕は

めちゃくちゃ痛いけど美容院行けない程ではないな

と思ってしまっていた

膝の皿は折れても立てるのである

曲げたりすると激痛だが足を曲げなければ普通に立てるのである

だとしても阿呆である

足を引きずりながら再度バイクに跨り夜の街を走り出した

しかし100メートルほど走ったあたりであろうか

猛烈に体調が悪くなったのである

大きい骨折などをするとそこに血が集まり貧血症状になりブラックアウト寸前になることがある

まさにそれだった

進路を変え家へと帰宅した

バイクを止めて息も絶え絶えながらマンションに着いたのだがそこから動けない

当時僕は2階に住んでいたのだがそれすら登れなかった

諦め電話で親に助けを求めた

バイクでコケて立てない、家の前にいるから迎えにきてくれ

瀕死ながらそれだけ伝えてコンクリートの床に寝転んだ

ひんやりしたコンクリートを背中で感じながら骨折したら嫌だなぁなどだ呑気なことを考えていた

バッチリ折れているのだが

しばらくして母が犬を連れてやってきた

なぜ?

肩貸せないじゃん

我が家の犬はマルチーズである

愛らしい小型犬だ

まるで笑っているかのような表情で舌をだし我々からお菓子をねだってくる

まさに我が家のアイドル、お犬様である

しかし事態はそれどころではない

なんで犬を連れてきたの?

必死にツッコんだ

だって一人にしたら可哀想でしょ?

と母

俺の方が可哀想だろうが!

呆れ顔で僕を見下ろした母はクルリと背中を向け

つかまれば?

 

無理だよ!

結局しばらく休んで自力で這って家まで到着した

さすがの母も異常だと思ったらしく

ちょっと膝を見せてよ

と言ってきた

見事に真っ赤に腫れた膝は実に痛々しかった

それを見た母は膝を指で押そうとした

母の手首を掴む

何をするんだ!

とぼけた表情で母は答える

折れてたらグニャってなるから確かめようと思って

 

母は東北の田舎の出身である

なんというか、命にドライなところがある

昔は畜産もやっていたそうだ

そういうところが出たのであろう

このままでは逆に恐ろしく夜間もやっている緊急病院へ向かった

それからボルトを入れる手術をして翌年摘出

今では後遺症もなく元気にやっている

 

私がこの文章を通して言いたいのは怪我は甘く見るな

親は信じるな

の二つである

皆様も健康には気をつけてこの夏を乗り切りましょう